アスペルガー

ADHDとアスペルガーの違いを知り適切な支援を見つけるには?

この記事の著者

田中 繁 / 発達障害コミュニケーション指導者

「うちの子はADHDじゃなくてアスペルガーなの?」
「ADHDとアスペルガーが似ているのはどうして?」
「お医者さんによって言うことが違うのよね…」

こんなことでお悩みではありませんか?

ADHDとアスペルガーというと、混同されがちな障害です。

なぜなら、両者はどちらも発達障害の一種で、特性が似ていたり合併していたりするためです。

ですが両者を同じにしてしまうと、正しい対策方法を立てられず、お子さんの失敗体験を増やしてしまいます。

失敗体験が増えるとお子さんの自己肯定感が下がってしまうので、これ以上お子さんに哀しい思いはさせたくないですよね。

そこで今日は、ADHDとアスペルガーの違いを詳しく解説していきます。
これを読むとお子さんに合った支援のやり方を見つける鍵が見つかりますので、ぜひ最後までお読みください。



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ADHDとアスペルガー(ASD)の明確な違い

ADHDとアスペルガーの違いは、位置づけと主な症状です。

ADHDは特異的発達障害という区分にあたる発達障害で、特徴は以下の2つがあげられます。

● 不注意
● 多動性・衝動性

ADHDは、これら2つの特徴が同年齢の人と比べて多い場合に診断されます。

近年、ADHDという言葉が一人歩きし、ネットに流れる「ADHDの特徴」を見て、自身もそうなのではないかと思う人が増えている傾向にあります。

しかし、この2つの特徴があるからADHDであるとは簡単にいえません。

またアスペルガー症候群(=アスペルガー障害)は「自閉症スペクトラム症(=ASD)」という発達障害群を代表する障害です。

今ではほとんど「アスペルガー」という名前は使われておらず、「自閉症スペクトラム症(=ASD)」と言われます。

アスペルガーの特徴は以下の2つです。

● 社会的コミュニケーションの不得意
● 興味対象への過集中や習慣・行動へのこだわり


これらの特性を持ちながら、ASDの中でもアスペルガー症候群は以下2つの特徴もあります。

● 自閉性障害(アスペルガーと同じくASDに分類される発達障害のひとつ)と比べてコミュニケーションの障害が少ない

● 知的能力や言語能力に困難を示さない

自閉症スペクトラム症(ASD)としての特性に加え、アスペルガーは特有の性質を持つことがわかります。

このようにADHDは行動の抑制に対して、アスペルガーはコミュニケーションが苦手という明確な違いがあります。



ADHDとアスペルガーの類似点

ここまでADHDとアスペルガーの大まかな違いを見てきましたが、両者には似ている点があります。

それは「どちらも発達障害である」ことです。

そもそも発達障害とは、生まれつき脳の器質に変形・損失があることで引き起こります。

発達障害の分類は多岐にわたりますが、異常がある脳の箇所によって種類が決まっているとも言われます。

ただし、発達障害についてはまだ解明されていない点が多いのも事実なので、安易にどちらかという判断を素人がしないようにしましょう。



ADHDとアスペルガーの違いを特徴で比較

ADHDとアスペルガーは似ていても違う発達障害です。

両者の特徴をそれぞれ3つの観点から見ていきましょう。



ADHDの特徴

ADHDの特徴についてお伝えするには、やはり不注意と多動性・衝動性は避けられません。

ここではさらに、多動性と衝動性を分けて詳しく解説していきます。



不注意

ADHDにおける「不注意」の具体的な事例は以下の通りです。

● 話しかけられたときに聞いていないように見える
● 順序立てて何かを行うことが苦手
● 物をよく失くす
● 注意散漫で勉強に集中できない

このような不注意の特性は、ADHDによく見られます。



多動性

また、ADHDにおける「多動性」には、以下のような事例があります。

● 手足をせわしく動かしたり、いすの上でもじもじしたりする。
● 立ち歩いてはいけない場面で立ち歩いたり、そわそわしたりする。
● 静かに遊んだり休憩したりできない。
● 頻繁にマシンガントークを行う。

このように、ADHDはじっとしていられない、落ち着かないことが多いです。



衝動性

そして、ADHDにおける「衝動性」の具体的な事例が、以下の通りです。

● 相手の質問が終わる前に答えはじめてしまう。
● 順番を待てずに抜かしてしまう。
● 会話やゲームなどで、他人を邪魔しようとしてしまう。

こういった衝動性の特性も、ADHDにはよく見られます。



アスペルガーの特徴

アスペルガーの特徴も大きく分けて2つですが、ここではアスペルガーならではの特徴「フラッシュバック」についてもあわせてお伝えします。



コミュニケーションが苦手

今はASDに統合されましたが、アスペルガー症候群としていわれていたころに良くいわれていた特性は次の通りです。

● 比喩や冗談が通じない。
● 相手の気持ちを察することが難しい。
● 怒りっぽく、よく喧嘩してしまう。

このように対人コミュニケーションに難があるのも、アスペルガーの特徴の1つです。



興味の偏り

アスペルガーには「こだわりが強い」という特徴もあります。

これは興味の偏りにも関係しており、想像力の障害と表裏一体といえます。

以下、アスペルガーの想像力に関する事例です。

● 他人にあまり関心がなく、喜んでいる人に共感しにくい。
● ドラマの好きなシーンを一日中観つづける。
● 物の配置や手順に強いこだわりがありパニックを起こす。

このようにアスペルガーは特にこだわりが強い特性が目立ちます。



フラッシュバック

また、アスペルガーはフラッシュバックを起こしやすいといわれています。

フラッシュバックとは、嫌な出来事があった場合に、その記憶があとになって鮮明に思い出される現象です。

ここでは、考えられている原因を2つ紹介します。

● 脳の記憶の暴走
● 視覚的な記憶力の高さ

これらによって嫌な記憶が鮮明に思い出され、癇癪を起こしてしまったり、体調を崩してしまったりします。



ADHDとアスペルガーの違いは診断できる?

発達障害の診断は、DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)かICD-10(国際疫病分類)にそって行われます。

どちらを参照した場合でも、ADHDとASDは別の障害として診断されることになります。

また、書籍やweb上にはADHDやアスペルガーの簡単なチェックリストがいくつもあるため、気になる方はセルフチェックをするのもいいでしょう。

ただし、鵜呑みは禁物です。

発達障害の特性は誰もが持っているとも言われており、診断指標は「程度」と「恒常性」の微妙なラインで線引されます。

セルフチェックリストは参考程度にして、必ず専門医へ相談するようにしてください。



ADHDとアスペルガーの診断が難しい理由

ADHDとアスペルガーは、似た特性も多く持ち合わせています。

そのため、専門医でも誤診を避けることは困難です。

まだまだ謎の多い障害ということもあって、両障害の定義は何度も再検討されてきました。

その理由を具体的にお伝えすると次の通りです。

● ミスの多さは両方に共通する
● 空気が読めない点はADHDにもある
● 過集中はどちらにも起こりやすい

それぞれ具体的な内容を解説していきます。



ミスの多さは両方に共通する

ADHDもアスペルガーも、細かなミスが目立つ障害です。

ADHDには代表的な特性として不注意があります。

注意の切り替えがうまくないADHDは、忘れ物や抜け漏れが多いです。

一方、アスペルガーにはルールへの遵守やこだわりの強さ、言葉以外の意味を汲み取ることが困難といった特徴があります。

臨機応変さがない行動、指示の取り違えなどが起こってしまい、日常的なミスとして現れます。



空気が読めない点はADHDにもある

空気が読めないといわれがちなアスペルガーですが、ADHDにもその傾向があります。

というのも、ADHDは注意散漫がゆえに、他人の話を真剣に聞いていられないことがあるからです。

じっとしていられずそわそわしてしまったり、視線をあちこちへ向けてしまったり、意識がどこかに行ってしまって聞き直したりといった行動が見受けられるこおtが多いです。

ADHDのそうした言動は、相手からすると「空気が読めていない」と思われ、誤解を受けてしまいます。



過集中はどちらにも起こりやすい

過集中についても同じです。

ADHDの「切り替えの困難さ」と、アスペルガーの「こだわりの強さ」は、どちらも過集中という形で現れます。

どちらにせよ、過集中後には疲れるケースが多いため、強みとしても見られますが、両者とも注意が必要な特性です。



そもそもADHDとアスペルガーは併存する

発達障害は、どれかひとつに当てはまれば他の発達障害の特性も一緒に現れることが多くあります。

特にADHDとアスペルガーは、一緒に現れる可能性の高い発達障害です。

主な障害にASD、違う障害にADHDと診断が下されるケースも少なくありません。



実は発達障害の診断自体が難しい……

そもそも、発達障害はその診断が非常に難しく曖昧な障害です。

精神障害は病状診断といって、症状のヒアリングや生活状況のヒアリングを通して医者が科学的根拠もなく勝手に判断します。

もちろん心理検査もあわせて行うことも多いですが、それでもレントゲン写真やCT検査と比べたら何も根拠がないのと同然です。

さらに、発達障害の特性は、一般の方も含めたほぼすべての人が持っています。

これは何を意味しているかと言うと、【医師の匙加減で誰でも病気にしてしまうことが可能】ということです。

そんな状況の中で判断されてしまうのですから、以下の3点は大切な基準です。

● 特性の程度がはなはだだしいか
● 幼少期から、どんな場面でも発現するか
● 困り感(日常生活において感じている困難さを指す言葉)があるか

このように、診断は困難を極めます。



ADHDとアスペルガーの違いを7つの特性から比較

既にADHDとアスペルガーの違いを、それらの主な特性から解説していきましたが、ここではよくある特性ごとに見ていきましょう。

この項目で紹介するのは以下の7つの特性です。

● 対人関係
● こだわり・集中力
● ワーキングメモリ
● 仕事・計画性
● 掃除
● 運動
● 感覚過敏性

それぞれ解説していきます。



対人関係

まずは対人関係についてです。

対人関係の困難さをきっかけに発達障害を自覚する人は結構多いです。

とはいえ、ADHDとアスペルガーでは対人関係悪化の原因が異なります。



ADHD

計画性のなさや忘れっぽさにより、遅刻やケアレスミスが多く人を怒らせてしまいがちです。

また、衝動性や注意散漫によって、相手の話に被せて喋ってしまったり集中して話を聞けなかったりする場合も多くあります。



アスペルガー

ASDは、言葉を文字の意味どおりに捉える特徴があります。

たとえば、遅刻を叱られている場面で「今何時だと思っているんだ!」と言われれば、素直に「◯◯時です」と答えてしまうなどです。

このようにアスペルガーは、言葉のコミュニケーションが苦手です。



こだわり・集中力

集中力という言葉は発達障害を語る上で避けては通れません。

うまく付き合えれば、発達障害の大きな武器となる特性です。



ADHD

過集中の特性を持つADHD。

ですが、興味関心が目まぐるしく移り変わるのもADHDの特徴で、ひとつのことに集中することは珍しいといえます。

どちらかといえば、集中力がすぐに切れてしまうことで悩む人が多いです。



アスペルガー

興味対象への集中力がすさまじいASDは、ADHD以上の過集中ぶりを発揮します。

また、こだわりも非常に強い傾向にあります。

イレギュラーな事態に弱い反面、規則の整った作業や自らの興味が強い分野については、何時間でも集中できます。

とはいえ、過集中によって体調を崩しがちな点には注意が必要です。



ワーキングメモリ

ワーキングメモリとは、短期記憶容量のことです。

ワーキングメモリには、音や言葉で聞き覚えたものを処理する「言語性ワーキングメモリ」と、見たり想像したりしたものを処理する「視空間性ワーキングメモリ」の2種類があります。



ADHD

ADHDは、言語性ワーキングメモリと視空間性ワーキングメモリの両方が弱い傾向にあります。

衝動性でも説明できますが、目の前の刺激に反応してやるべきことを忘れてしまうなども、ワーキングメモリの不具合によるものです。

また、文章を読んでいる途中にその内容を忘れてしまうなど、全体的に短期的な記憶が苦手といえます。



アスペルガー

ASDは、聴覚を通した短期記憶が苦手です。

そのため、指示されたことをすぐに忘れたり、話しかけられてもすぐに反応できなかったりします。

また、ASDは一度に多くの情報を耳から取り入れることができません。

聴覚で得た情報は上手く処理できない場合が多いです。



仕事・計画性

社会生活、集団生活を送る上で特にネックになるのが、仕事への影響です。

これもADHDとアスペルガーの両方に見られますが、その詳細は異なります。



ADHD

不注意や衝動性によって仕事に対する不具合が多くあります。

具体的なミスの例としては、忘れ物、遅刻、納期遅れ、書類紛失などがあげられます。

また、順序立てることを苦手とするため、計画的なタスク管理もうまくいかないことが多いでしょう。



アスペルガー

コミュニケーションにおいてニュアンスを汲み取ることが苦手なASDは指示の意図が受け取れず、報連相に困ることもよくあります。

また、突然の出来事に弱い特徴があり、急なスケジュール変更やハプニングによって計画どおり仕事がこなせないことも多いです。



掃除

一時期『片づけられない女たち』という本が話題になりました。

サリ・ソルデンにより書かれたADHD女性の掃除に関する著書です。

発達障害は掃除においても一般の方との違いが見られます。



ADHD

忘れ物や失くし物が多いADHDにとって、整理整頓や掃除といったものも苦手分野です。

いざスタートしても、注意力がないことでまったく進まないどころか、あちこちに手をつけて余計に散らかすということも見受けられます。



アスペルガー

こだわりの強さから収集癖のある人が多いASD。

そのため、物を捨てられずに散らかっていくケースが多くあります。

また、一見散らかっているように見える部屋も、本人にとっては自分で決めた規則性に従って整頓された状態であることが珍しくありません。



運動

発達障害は、そのうちのどれかに該当すれば他の発達障害も合併する可能性があります。

合併とまでいかなくとも特性の一部が見られることは多くあり、運動についても同様にいえるでしょう。

実は、発達障害には「発達性協調運動障害」という、運動に困難が生じるものが存在します。

ADHDやアスペルガーの運動への困難さは、こうした事が原因でしょう。



ADHD

運動自体に、ADHD特有の不具合があるわけではありません。

しかし、衝動性のために忍耐力が試されるスポーツは苦手な傾向にあります。



アスペルガー

アスペルガーには体癖がおかしいという特徴があります。

体癖とは、体の一部がこわばっていたり動きが不自然だったりすることです。

運動能力に影響のある小脳に障害を抱えていることが原因ともいわれ、この異常は運動能力に十分影響を及ぼしうると考えられます。

また、社会的コミュニケーションの苦手なASDは、チームプレーのスポーツをする場合に困難を感じることも多いです。



感覚過敏性

アスペルガーについて外せないのが感覚過敏です。

ADHDとも比較しながら、その特性を解説していきます。



ADHD

ADHDには感覚過敏性が見られませんが、そもそもASDと合併している可能性が高いADHDは感覚過敏があることは十分考えられます。

そのため、ADHDだから感覚について注意しなくても大丈夫だろうという考えるのではなく、「もしかしたら感覚が過敏なのかも?」と注意しておく必要があります。



アスペルガー

ASDには感覚過敏と呼ばれる特性があります。

感覚過敏とは、五感のうちのいずれか、あるいは複数が敏感であることを指します。

たとえば、触覚過敏であれば水が苦手だったり服の素材に異様なこだわりがあったりし、味覚過敏であれば偏食につながったりします。

その過敏が体調に関わることもあるので、お子さんにあったサポートをするようにしましょう。



ADHDとアスペルガーの違いを知り、お子さんに合った支援方法を見つけていこう!

ADHDは「不注意、衝動性・多動性」が特性であるのに対して、アスペルガーは「社会的コミュニケーション力、想像力」がキーワードです。

それぞれ多くの特徴があり、異なる部分も多くあります。

ADHDとアスペルガーはどちらも発達障害ということもあって混同されがちですが、別の発達障害であるため、支援には注意が必要です。

ただ障害名にこだわるよりも、あくまでも「うちの子に合ったやり方はどれだろう?」を探っていくのが、正しい支援の見つけ方だということは覚えておいてください。

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この記事の著者

田中 繁 / 発達障害コミュニケーション指導者

中学・高校とハンドボールに熱中し、高校では全国ベスト16、インターハイ春夏出場を達成しました。その分、勉強はホント苦手で…。高校受験もギリギリまで部活をしていて、いざ受験勉強を始めても、どこから勉強していいのかわからず、時間ばかり無駄にしていました。そこからお願いした家庭教師の先生に、一から勉強のやり方を教わってからは成績もメキメキ上がり、無事志望校に合格することができました。誰でも悩みや不安は必ずあると思います。自分の経験も踏まえて、一番親身にお応えしますので、いつでもご相談くださいね。

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