【ADHDの子への対処法】子どもを傷つけない上手な叱り方
「ADHDってじっとしてないから、ずっと叱ってる…」
「叱ったあとは、こっちが落ち込むのよね…」
「ADHDに有効な叱り方ってあるのかな?」
こんなことでお悩みではありませんか?
ADHDを抱えるお子さんには多動性や衝動性、不注意といった特性があるのに、ときに親御さんは、この前提を無視して、反射的に怒ってしまう場合があります。
発達障害でなくても親に感情的になられたら子どもは傷つきますし、ましてや発達障害の特性から日常的にやってしまうことまで叱られてしまうと、子どもは萎縮し、叱られたことがしこりとなって積み重なり、トラウマになってしまいます。
「でも…仕事と家事と育児でクタクタになっている時に何かされると、どうしても冷静になれない」
お母さんだって叱るのが楽しい訳じゃありませんよね。
そこで今日は、ADHDの特性を詳しく紹介し、少しでも親御さんの誤解を解いていけるよう解説していきます。
これを読むとADHDのお子さんがよく叱られる原因とその対処法について分かるので、ぜひ最後までお読みください。
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ADHDを抱えるお子さんへの接し方・叱り方
ADHDを抱えるお子さんへの接し方は、まず特性を知るところからスタートしましょう。
なぜならADHDの特性を知らないと、間違った叱り方になるかもしれないからです。
基本的に発達障害を抱えるお子さんは、コミュニケーション能力に対して不得意があるため、一般的な観点から叱ってしまうと、「どうしてもできない」という状況に陥ってしまいます。
ですから、お子さんの特性を知ってから、次に接し方や叱り方を学んでいく必要があるのです。
以下では、3つの項目に分けて紹介していきます。
ADHDを抱えるお子さんの特性
一般的に多動性と衝動性は一緒に伝えられがちですが、本質的には違う特性となるため注意が必要です。
これらの特性を知り、「子どもの不得意」を認識し受け入れることで、口調が柔らかくなったり、焦らなくなったりと、精神的な余裕につながるはずです。
それでは、さっそく解説します。
ADHDを抱えるお子さんの特性の一つ目は、多動性です。
多動性とは、落ち着きがなかったり一方的におしゃべりをしすぎたりすることを指します。
たとえば、次のような状況は多動性として考えられるでしょう。
- TPOを考えずにしゃべり続けてしまう
- 動き続けてしまう
- 順番を待ちきれず行動してしまう
- 勉強中に足を動かし続けてしまう
このような特性があるため、一般的なマナーとして気になることも多くなります。
とはいえ、次の衝動性と合併すると「どうしても我慢ができない」という考えに支配されてしまうため、自然と体が動いてしまうのです。
そのためADHDのお子さんが動き続けてしまうことは、ある意味自然なことであると受け入れる必要があります。
続いては多動性と合併することで、どうしても我慢できずに行動してしまう衝動性です。
衝動性は簡単にいうと、我慢ができない特性であり、TPOはわかっているにもかかわらず、突然動きたいという欲求に支配されてしまいます。
ただ、この特性はADHDを抱えていないお子さんであっても幼少期によくあることですよね。
たとえば、赤ちゃんがレストランにいるのに突然泣き出すことはよくあります。
このように誰もが抱えている特性なので、発達段階において徐々にコントロールできるようになりますが、ADHDを抱えているお子さんは苦手な傾向があります。
最後は不注意です。
ADHDにおける不注意とは、単に抜けていてドジを踏んでしまうということではなく、日頃から次のような失敗が起こることを指します。
- 物をなくしてしまう
- スケジュール管理ができない
- 時間にルーズ
- 約束を忘れてしまう
このように言われたことに対して対応できない特性を不注意といい、一般的に考えられる、ちょっとした集中で回避できる「不注意」とは異なる点に注意してください。
どれだけ集中していても、多動性・衝動性と合併すると忘れてしまうのです。
ADHDを抱えるお子さんへの接し方
ここまでADHDを抱えるお子さんの特性について解説してきましたが、ここからは、接し方にはどのようなものがあるかを確認していきます。
とくにADHDのお子さんは一つの物事に集中するのが苦手なため、慣れるまでは1つの指示で1つの行動をさせることを意識しましょう。
接し方-1
指示を明確に伝える
ADHDを抱えるお子さんへの接し方の一つ目は、指示を明確に伝えることです。
指示を明確に伝えるとは、少しふんわりした表現になってしまうので、具体例を用いて確認してみましょう
このようにダメな指示の出し方では、2つの指示があるのに対して、いい指示の出し方では他の1つの指示に限定されています。
ADHDを抱えるお子さんは複数の指示を聞くのが苦手なので、まずは1つの指示からするようにしてみましょう。
接し方-2
マルチタスクを求めない
続いてはマルチタスクを求めないことです。
マルチタスクとは、複数の物事を処理するように求めることであり、「〇〇したあと、△△して」というように指示を出せばマルチタスクとなります。
先ほどお伝えした、指示を明確に伝えるとも重なりますが、ADHDを抱えるお子さんは指示を連続して処理する能力に不得意がある点に注意しましょう。
とはいえ、発達段階において、どのお子さんでも抱える問題なので、マルチタスクができない=ADHDであるといった素人考えは止めておきましょう。
接し方-3
できたことに対して全力でわかるように褒める
最後の接し方は、どのお子さんにも当てはまりますが、できたことに対して全力でわかるように褒めることです。
というのも、ADHDを抱える子だけでなく、発達障害を抱えるお子さんは、周りの子ができることができず、自信を喪失しがちだからです。
自信の喪失、つまり自己肯定感が低くなってしまうと、どんな行動にも自信が持てず「できるのにできない」状態に陥ってしまいます。
そのため、できたことに対して全力で褒めてあげて、周りからは褒められなくても親御さんだけは褒めてくれると安心感を持たせ、自己肯定感を育んであげましょう。
最も注意しなければならないのは、「発達障害を抱えるからできなくて当たり前」と親御さんが思ってしまうことです。
すると、お子さんは「自分は発達障害だからできないんだ。仕方ないんだ」と思ってしまいます。
ADHDを抱えるお子さんへの叱り方
ここまでADHDに関する特性と接し方をお伝えしてきましたが、最後の項目では叱り方について解説していきます。
叱り方-1
大きな声で怒鳴らない
ADHDを抱えるお子さんへの叱り方の一つ目は、大きな声で怒鳴らないことです。
怒鳴るとは感情に任せて注意することで、親御さんの精神が高ぶっている状態だと、つい怒鳴ってしまいますよね。
ですが怒鳴るはある種の威嚇行動であり、怒鳴られたお子さんは萎縮してしまいます。
萎縮すると当然ストレスや緊張から頭の中が固まり、同じミスを繰り返す原因になってしまいます。
叱り方-2
怒るではなく「叱る」を意識する
大きな声で怒鳴るとき、親御さんの精神は「怒り」で支配されていないでしょうか?
このような状況で話をスタートしてしまうと、口調はきつくなってしまいますし、自然と怒鳴ってしまいます。
「怒り」に精神が支配された状態で注意するのではなく、あくまでお子さんを叱るようにしてください。
逆に叱るとは、ある行動に対して注意し改善を促すことなので、怒りに任せて怒るのは決してしてはいけません。
これを防ぐには、怒りに精神が支配されている場合は、まずお子さんと距離を取って落ちつき、時間がたってから「何が問題だったのか?」を親子で話し合い、改善ポイントを伝えていきましょう。
叱り方-3
改善するべき行動を1つに絞り注意する
お子さんに改善ポイントを伝えるときには、1つに絞って注意するのがベストです。
というのも、先ほどお伝えしたようにADHDを抱えるお子さんはいくつかの物事を同時に伝えられるのが苦手だからです。
親御さんにとっては、一度の指示で全ての行動を改善してほしいと考えがちですが、そうすると余計に行動は直りません。
ですから、まずは1つの行動を改善するところからスタートしましょう。
ADHDを抱えるお子さんが叱られる原因になる行動
ADHDを掛かるお子さんが叱られる原因になる行動は、次の通りです。
これらの行動は、社会的にみてマナーが悪い、もしくは悪いこととして見られがちですが、感情の抑制の苦手や不注意があるADHDのお子さんの場合には、そもそも苦手があるので注意して叱らなければいけません。
それでは、解説していきます。
掃除ができない
ADHDのお子さんが叱られる原因になる行動の一つ目は、何度言っても掃除ができない点です。
掃除は意外に思われるかもしれませんが、マルチタスクを求められるものです。
例えば、
- ごみ捨て
- 片付け
- 窓拭き
このように各種やるべき行動が異なってくるため、掃除に苦手を抱えやすくなります。
そのため掃除のチェック項目を作り、できたらチェックを入れるといった方法が効果的な指示方法です。
宿題するように伝えてもやらない
また宿題をするように言っても、やらない子に悩む親御さんは多いですよね。
これには衝動性・多動性が関係している可能性が高く、その結果、集中力不足が起きてしまうと言われています。
集中力が持続しない場合には、最初は『10分だけ宿題をする』など、時間を決めて取り組ませるようにしましょう。
宿題→休憩→宿題と、飽きさせない工夫をすることで対策できます。
唐突に他のことをやりだす
宿題にも関係するのですが、衝動性と多動性から集中力が不足しがちになり、唐突に他のことをやりだしてしまうのも、叱られる原因のひとつです。
宿題に集中していると思ったら、急にテレビを見たり、期限までに提出物をださなければならないのにゲームをしたりと、本人に自覚はあるものの止められません。
このようなときは、まず親御さんが時間を管理してあげるのが重要です。
先ほどお伝えしたように、時間を区切って対処するのが改善策として有効です。
熱中しすぎてしまうものがある
ADHDは不注意の特性があるものの、本気で熱中できるものがあれば過集中に陥ることもあります。
ゲームに熱中しすぎて頭痛を起こしたり、興味のある勉強を延々として体調を崩したりすると、親御さんは心配のあまり「ゲーム何時間やってるの!」「もうやめなさい!」と叱ってしまいますよね。
ADHDのお子さんは、ASDのお子さんと同様、過集中に陥る危険性が高いので、何かをしすぎていると感じたら時間制限を設けてあげてください。
不注意から危ない行動に出る
ADHDを抱えるお子さんは、不注意から危ない行動に出る場合もあります。
不注意によって集中力が不足し、隣の木を見たいからと勝手に横断歩道を渡ることもあります。
もちろん発達段階によって改善はしていきますが、安全に行動するのが難しい場合には、外出は親御さんの管理下の元で目を離さないようにしましょう。
癇癪を起こしてまう
ADHDの子は、ときには癇癪を起こし、親御さんから叱られてしまいます。
ADHDのお子さんが癇癪を起こしてしまう背景には、脳機能にも多動性と衝動性があるからです。
ADHDの子は、考えたくないのに嫌なことを考えてしまったり、いろいろな考えが脳内を駆け巡って感情が爆発してしまったりするのです。
これは仕方ないことですし本人にも止めようがないことなので、そういった傾向を持っている点には、理解を示してあげるべきです。
癇癪を頻繁に起こしてしまう場合には、お子さんを止めようとせず、親御さんが遠くから見守り落ち着くのを待ってあげてください。
その後、感情が爆発しそうになったときはどうすれば落ち着くのかを、親子で話し合い実践していきましょう。
忘れ物がたくさんある
よく叱られる原因の最後になりますが、ADHDの子は忘れ物がたくさんあり、その都度叱られてしまう場合があります。
これは不注意が関係していますが、典型的なADHDの特性が背景にあると考えてください。
忘れ物をするのは自覚がないからだと言ってしまうのは簡単ですが、親御さんの仕事は、忘れ物をしない仕組みを作ってあげることです。
例えば、毎日、夜決まった時間になったら明日の準備を一緒に親御さんとすると、忘れ物はどんどん減っていくでしょう。
忘れ物をしない準備のために、チェックリストを用意するのもいいでしょう。
このようにしていくと、忘れ物で叱る頻度を減らしていくことができます。
ADHDを抱えるお子さんへの叱り方の注意点
ここまでADHDを抱えるお子さんが叱られる原因と対処法をお伝えしてきましたが、叱り方の注意点も確認しておきましょう。
具体的な注意点は次の通りです。
それぞれ解説します。
お子さんに恥や恐怖を与える叱り方はNG
ADHDを抱えている・抱えていないお子さんどちらにもいえることですが、お子さんに対して恥や恐怖を与える叱り方は絶対NGです。
というのも、恥や恐怖はトラウマになってしまう可能性が高いからです。
すると、何もできないお子さんになってしまうので十分に注意しましょう。
ADHDを正しく理解していることが大前提
ADHDを抱えるお子さんをきちんと叱るためには、特性を正しく理解しておく必要があります。
例えば、
- 不注意が多い
- 集中力を切らしてしまう可能性がある
こういった特性の知識があるかないかだけでも、お子さんの失敗を受け入れ方が変わってくるので、知識はぜひ頭に入れておいてください。
親御さんのストレスにも注意する
とはいえ、ADHDの特性を理解をしていても、度々ある失敗やその他の出来事で、ストレスが溜まってしまうこともありますよね。
このようなときには、あえて失敗に目をつぶり、ストレスを回避することをおすすめします。
というのも、親御さんがストレスを抱えてしまうと、ストレスのはけ口としてお子さんを怒ってしまう可能性があるからです。
ですから寛容な気持ちでお子さんを見守っていきましょう。時には手を抜くことがストレスを溜めない秘訣です。
あれもこれも言い過ぎない
繰り返しになりますが、ADHDのお子さんに限らず発達障害を抱えるお子さんは、マルチタスクが苦手な傾向にあります。
そのため、あれもこれもと指示を出しすぎないようにしましょう。
一度の改善で対応できるのは1つまでと考え、対処していくのがベストな方法です。
ADHDを抱えるお子さんを叱るときは特性をきちんと見定めよう
ここまでADHDを抱えるお子さんを叱るときの注意点についてお伝えしてきましたが、繰り返しお伝えしている特性を理解する点について、もう少し深堀してみましょう。
具体的には、各発達段階を区分わけし、その特徴をお伝えしていきます。
保育園頃によくある特徴
ADHDのお子さんが保育園の頃になるとよくあらわれる特徴としては、次のようなものがあります。
- 物を壊してしまう
- 癇癪を起こしてしまう
- じっとしていられない
正確にはADHDの特性は、3歳頃から現れるといわれており、何度注意しても保育園の頃になるまで上記の点が直らないのであれば、一度診断を受けてみるのもいいでしょう。
特に幼児期は、危ない行動をお子さん自身で止められない可能性もあるので、親御さんの十分な注意が必要です。
小学生によくある特徴
小学生になるお子さんがADHDを抱えている場合には、次のような特性が現れます。
- 授業中に椅子に座らずうろうろしてしまう
- 忘れ物が多くなる
- 順番を待てない
このように小学生の発達段階になれば、程度の差はあるものの、ほとんどのお子さんができる行動に苦手を抱えてしまいます。
とはいえ、小学校低学年までのお子さんだと、ADHDを抱えるお子さんと同様に我慢ができずに遊びはじめてしまうこともあるので、診断を焦ることはありません。
ただ、中学年頃になりはじめて周りのお子さんと同じ行動ができないとなると疑わしい可能性があるので、きちんと専門医の診断を受けるようにしましょう。
中学生・高校生によくある特徴
最後は中学生や高校生という思春期を越えたあたりからのADHDを抱えるお子さんの特性です。
具体的には次のような特性があります。
- 定期テスト勉強が計画通り進まない
- 思ったことを口に出して、友達をなくしてしまう
- 勉強が極端に苦手
このように中学生・高校生では、コミュニケーション能力に対して苦手が発現しやすく、周りのお子さんとの間に溝が出来てしまう可能性もあります。
この段階になると、いち早く訓練をしないと社会での生きづらさを感じてしまい、不登校や無関心を引き起こしやすいです。
それに加えて、都道府県によってはADHDと一般の学生の間に対する学力格差を埋める入試制度がないところも多いです。
仮に高校受験に失敗してしまうと、高校・大学全入時代と呼ばれる昨今では就職が難しい恐れもあります。
ADHDを抱えるお子さんの治療方法とは
ここまで各発達段階における特性を確認してきましたが、ADHDを抱えるお子さんに対する治療法には、どのようなものがあるのでしょうか?
具体的な方法としては次の通りです。
治療方法
- 環境整備
- 周りからの支援
- お子さん自身で行動を修正する
このように多くの治療法があり、ADHDの症状が社会的にどのような影響を与えているかによって治療方法が変わってきます。
親御さんだけでは分からなければ、地域の発達障碍者支援センターに相談するなど、周囲からの協力も遠慮なく要請しましょう。
ADHDを抱えるお子さんの叱り方には、細心の注意を払ってあげよう
ADHDだけでなく発達障害を抱えるお子さんは、親御さんから見ていると「なんでこんなこともできないの!」と怒りたくなるほど、周囲のお子さんと比べて苦手が多いかもしれません。
でも、周囲のお子さんだって、どんな子だって苦手を抱えていて、少しずつ自ら修正していくことで社会生活に慣れていくものです。
ですから、「ADHDだからウチの子はできない」と断定するのではなく、「親子で一緒に徐々にできるようにすれば大丈夫!」と思い、少しずつ教えてあげましょう。
他のお子さんよりも時間はかかるかもしれませんが、苦手なものを得意にするのには、どんな子であれ十分な時間が必要です。
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